期 日:1997年1月1日〜5日
メンバー:L川名/SL菅野/SL茅ノ間
佐藤/野口/関本/真島/三品(新人)1/1(元旦)天候:晴れ
横須賀→新宿→茅野→美濃戸口1100横須賀を早朝出発。茅野よりタクシーにて美濃戸口到着。美濃戸口の小屋が無くなっているのにびっくりした。
美濃戸口発1130〜美濃戸1300〜(南沢)〜行者小屋着1600
美濃戸口を出発してすぐに会OBグループ(年末から小屋泊まりで南八入り:計6名)に会う。一般ルートの積雪状況等を聞き別れる。行者小屋にて、OB隊に同行していたメンバー(佐藤/野口/三品)と合流。彼らが今日設営したテントに入る。夕食はすき焼き。
1/2(木)天候:吹雪
雪のため停滞。佐藤、三品の2名は下山する。
1/3(金)天候:吹雪
ルート:小同心クラック{L川名/菅野/茅ノ間}
BC発0500〜赤岳鉱泉0530〜(大同心沢〜小同心稜)〜小同心基部0900/登擧開始0920〜[小同心クラック]〜小同心の頭1430〜横岳山頂直下1500〜小同心の頭1630〜小同心基部1730〜下部岸壁基部1830〜ビバーク地点2100天候は悪かったが、悪天時の岩場の状況も見たかったので出発する。
関本はTK。野口は我々を見送った後下山となった。
赤岳鉱泉を過ぎ、大同心沢に入ると案の定トレースは消えていた。新雪は約40cm程度。少し苦労をし小同心稜に取り付くと、微かなトレース後が樹林帯の中にあった。下部岸壁をノーザイルで直登し、小同心の基部に到着。風は強く、横殴りの雪が舞っていた。登擧中止が頭の中をよぎったが、手は登擧準備をしていた。
残置ハーケンが殆ど分からず、ホールドも雪と氷をかき分けての登擧となった。当初は、菅野と茅ノ間の二人にリードさせるつもりでいたが、今回の天候で岩場のコンディションが極端に悪い為、全て私がリードする事にした。強い西風が絶えず吹いているが、ルート自体はチムニーの中にある事と、背中からの吹き付けなので比較的気にせずに登れた。しかしホールドが悪い。2ピッチ目の終了点でチムニー(クラック?)が終わり吹きさらしとなる。ビレーをするために風上側を向かなくてはならないために非常に寒い。思わず目をつぶる。しばらく目をつぶっていると、上まつげと下まつげに着いた着氷がくっつき、目が開けられなくなる。無理矢理むしり取るがなかなか取れず痛い。
小同心の頭に到着したとき、一瞬ガスの中から大同心が現れる。見える範囲に登山者はいなかった。この時期に小同心クラックを登るのは3回目だが、過去2回はこの頭から何の苦労もなくノーザイルで山頂に着いていたため、何も考えずに登ったが、山頂直下で行き詰まる。確かにこのルートなのだが、一面真っ白になった岸壁はどこがホールドか全然分からない。何度かトライしてみたが結局あきらめ、そのほかのルートを探すがどこも同じように真っ白だった。16時過ぎ、登るのを諦めて小同心クラックを懸垂下降する事に決定。下山にかかる。早くしないと暗くなる。二人にハッパをかけた。
小同心クラック・2ピッチ目
ザイルを投げ落とすが、風が舞い上がっているためうまく落ちてくれない。強風が吹く度にフワッと浮き上がり、すぐにとがった岩に引っかかってしまう。そんなザイルをはずしながらの下降なので時間もかかる。私が小同心の基部にたどり着いた時にはまだ薄明るかったが、最後の茅ノ間が下降を終了した時点ではすでに真っ暗であった。
TKをしている関本に無線連絡。いままでの状況説明と、これからの予定を話し無線を切る。真島が夕方到着して、現在BCは二人だった。ヘッドランプを付けて出発。行きにノーザイルで直登した下部岸壁部分を懸垂下降で下り着き休憩をとる。考えれば、今朝行動を開始してから座るのはこれが初めてだ。ここまで来れば大丈夫と、しばらく休み出発。
いくらか下ったがルートを間違えている事に気がつく。あわてて登り返したが、また下りだして間違える。どうやらはまってしまったようだ。3回ほど上り下りを繰り返し、二人の(そして一番に私の)体力の消耗を考えてビバークを決定。今日のねぐらを探した。とりあえず、確実ここまでは間違いないという場所まで戻り、幾分平坦な場所を見つけた。両側に木が有り、ザイルを張ればツエルトが広げられる。今回はツエルトを二張り持ってきたので、一張りをザイルで張り、一張りは中でくるまった。一時間おき程度でコンロを炊き暖をとった。しかし寒い。殆ど睡眠をとると言う状況ではなく、ガタガタと震える体を小さくしながらウトウトする程度だった。
1/4(土)天候:快晴
{小同心隊}ビバーク地点0730〜赤岳鉱泉0900〜BC帰着1030
赤岳ピストン{L真島、関本}
BC1130〜(地蔵尾根)〜赤岳山頂1300〜(文三郎)〜BC着1500朝5時ツエルトを開ける。天気は良さそうだ。よかった。7時すぎツエルト回収。ザックの中味全てを床にひいていたが、その荷物をかまわずザックに詰め込む。ツエルトもただ丸めただけでザックに突っ込んだ。ほぼ快晴の状態だ。真下に赤岳鉱泉が見え、行者小屋も見えた。なんと我らのBCテントまでクッキリ見える。上を見上げると、真っ白な小同心がそそり立っていた。右端にまっすぐな黒いクラックが見える。あそこでビバークでなくてよかった。下山は昨日迷ったのが嘘のようにすっきり尾根が続き、少しのためらいも無くずんずん下れた。本当に嘘のようだ。
途中何度も振り返り小同心を3人で見上げた。とてもいいお天気なので、色々なところで油を売りながらBC到着。関本、真島の二人に出迎えられた。
装備を片づけた後、彼らが昨夜作ってくれていたカレーを食べた。その後我ら3名はシュラフに潜り熟睡状態となる。関本、真島は赤岳ピストンに向かった。1/5(日)天候:快晴〜小雪
ルート:阿弥陀岳北稜{A隊L川名/菅野/関本、B隊L茅ノ間/真島}
BC0700〜ジャンクションピーク0740〜北稜取り付き点0830〜[阿弥陀岳北稜]〜阿弥陀岳山頂1100〜阿弥陀のコル1120〜BC着1150/発1500〜美濃戸1600〜美濃戸口着1700快晴の阿弥陀北稜を全員で登る。天候でこんなにも違うのかと思い知らされるような、昨日とは対照的な登擧であった。阿弥陀山頂で全員で記念写真を撮る。(上記写真)
BC帰着後、大昼食会となる。と言うのは、私たちがテントに戻れなかった日、行者小屋のテント場を撤収するパーティに残った食料を大量にもらったと言うのだ。これが馬鹿にならない量で、捨てるわけにもいかず、出来るだけ食べてしまおうと言うことになった。焼き肉をメインに豪華な昼食を済ませたのは開始からなんと2時間後。あれだけいい天気だったはずが、テントから出てみると小雪になっていた。
テント撤収後出発。美濃戸にてタクシーの電話予約をし、美濃戸口着17時。電車の時間が中途半端だったため茅野の菊川にて夕飯を食べてから車中の人となる。
阿弥陀岳北稜2ピッチ目今回の反省点
悪天時の行動により予定外のビバークをする事になってしまった。自己の状況判断の甘さを痛切に感じた。後から考えてみると、自分自身"あの天候を登ってみたい"という一種挑戦的な感情があったと思う。経験の浅い二人を連れている事を考えて、もう少し自制した行動をするべきであった。ただし、二人には得難い経験になったはずだ。今後の二人の活躍に期待する。
以上
川名 匡(29期)