1998.12/31up

南アルプス・甲斐駒〜仙丈

家族で山登り


小仙丈岳にて


仙丈岳山頂にて 期  日:1998年8月20日〜24日
メンバー:L川名 匡/たつ子/努/徹/亜実
行  程
8/20(木)横須賀08:00→八王子→甲府11:00→広河原→北沢峠15:00〜テント場
8/21(金)テント6:08〜仙水小屋7:30〜仙水峠8:00〜駒津峰9:45〜甲斐駒ヶ岳着11:40
      甲斐駒ヶ岳発12:23〜駒津峰14:10〜仙水峠16:40〜北沢峠18:00
8/22(土)休息日(テント場周辺散策)
8/23(日)テント5:30〜北沢峠6:00〜大滝ノ頭7:50/8:10〜小仙丈岳9:20/9:35〜仙丈岳着10:45
      仙丈岳発11:10〜馬ノ背ヒュッテ12:25〜大滝ノ頭13:22〜北沢峠15:10〜テント15:20
8/24(月)テント撤収〜北沢峠→広河原→甲府→八王子→横須賀


今回の食糧  末っ子の娘が幼稚園に通い始めた頃、家族そろっての山遊びをはじめた。私は元々、子供達と一緒に遊ぶのは好きだが、面倒を見るのが大嫌いで、なんと言っても小さな子供をおぶったりしながらの登山はあまり好かない。特に穂高などの岩稜をアルミフレームの背負子に子供を乗せて歩いている大人などを見るとつい顔をしかめてしまう。ああなるとほとんど親のエゴで、自分たちが行きたいから子供を連れてきたというにおいがプンプンする。もし自分がスリップをしたり、落石でもあったらどうするのだろう……。と言うわけで、私は自分の子供が可愛いから、自分の力で歩けないような子供を山に連れていったことはない。しかし私の子供達は、私がいつも楽しそうに山の準備をして、自分たちと遊ぶ約束をしたのもケロッと忘れてルンルンと山に出かけてしまうおやじを生まれたときから見て育ったので、「山というところはそんなに楽しい場所なのか」と一種あこがれるようになったようだ。ある時長男に言われた。「山連れてってよ」「よし、身長が150センチを越えたら連れて行ってあげる」
 一家そろっての最初の山は尾瀬だった。前日に檜枝岐村の民宿に泊まり、当日は沼山峠から尾瀬沼まででテント泊。翌日は三平峠から大清水まで歩いた。急登や危険な場所もないし、ほとんどが木道で歩きやすい。初日の歩行時間はゆっくり歩いて2時間。2日目も3時間なかった。それでもまだ幼稚園の年中組だった末っ子にはきつそうだった。でも、おんぶしてもらわなかったとか、自分の荷物は自分で持ったとかの自信が、小さい子供にもついてくるのが見ていて分かった。
それからは毎年夏の上高地キャンプが恒例となり、昨年は上高地から西穂山荘まで登った。長男はもう母親より歩けるし、次男はペースこそ遅いが負けず嫌い。末の娘はすぐにふてくされて座り込んでしまうが、他の登山者が現れて「すごいね〜頑張ってるね〜」と声をかけられると今までが嘘のように軽快に歩き出す。全くげんきんな奴だ。そして今年……。いよいよ涸沢まで登るか。と考えて着々と準備をしていたらなんと上高地が群発地震に見舞われていると言う。入ってくる情報は悪いものばかりだ。大人達だけだったら何とか行けそうだが、ここはやはり大事をとって涸沢は来年送りとしよう。家族会議でそう決めて、おやじが計画を立てたのは南アルプスだった。前置きがとっても長くなってしまったが、こうして我ら一家の山登りが始まった。長男は150センチをはるかに越えてしまったが、今回は我が川名家一同にとっては初めての本格的な登山となる。

甲斐駒をバックに駒津峰のピークにて [初日〜入山]8/20(木)晴れ
 朝のラッシュの中出かける。いつも思うが、平日の朝立ちはこのラッシュを抜けるのが核心部だ。今回は子供達がいるので特に大変だったが、何とか横浜まで着く。横浜からはラッシュと反対方向なので座って行ける。
 甲府の駅ビルにあるマクドナルトで昼食。行動食のパンなども買う。広河原行きのバスが思いの外に込み合っていてビックリした。マクドナルドでゆっくりしていたら結局バス停に着いたときは登山者であふれていて、とても座れそうにない。少しがっくりとしていたら臨時のバスも出て、全員座れるという。ホッと一安心だった。
 バスに揺られること2時間半。広河原でマイクロバスに乗り換えて北沢峠に着く。バスを降りると、下界の夏の服装ではひんやりと涼しい。高い場所に来たと言うことを実感する。バス停から林道を少し戻り、約10分ほどで長衛小屋のあるテント場着。バスもそうだったが、何となく登山者が多いのは、やはり上高地の群発地震の影響か。トイレを済ませてから全員でテントを立てる。テントは今回新しく購入したエスパース2と言う山岳テントだが、家で予行演習をして来たので、私が手伝わなくても何とか立った。張り綱だけは私が張った。

[2日目〜甲斐駒ヶ岳ピストン]8/21晴れ(山頂はガス)
 前日の夜、作戦会議を開いて朝は早立ちとする。「みんな起きられるかぁ〜?」と聞いたら口をそろえて「一番危ないのはおやじだ」と言われた。……しかし、しっかりと5時に全員起きて、6時に出発をする。どんなモンだ。思い知ったか。エッヘん。
甲斐駒にて  仙水峠までの道のりは比較的だらだらと穏やかだ。子供達のウォーミングアップにぴったりだ。峠にたどり着くと魔利支天の大岸壁が出迎える。ここからは急登になるのでゆっくりと景色を楽しみながら休む。天気は快晴だ。甲斐駒の山頂付近もクッキリとしたシルエットを青空に浮き上がらせている。さて出発。樹林帯の急登を母親は至ってマイペースだ。子供達をおいてどんどんと登っていってしまう。おかげで私はどん尻でのんびりと歩けた。やはり次男の徹が遅れ出す。末娘の亜実(つぐみ)は何とか母親に着いていこうと必死で登る。長男の努は、私と徹に付き合ってしばらく登っては立ち止まり、しばらく登っては立ち止まりの繰り返し。何となく各自の性格が出て面白い。樹林帯を抜けて、景色が良くなってもこの順序は変わらず。母親や亜実の待つ小松峰に、汗抱くの次男と私は最後に到着した。
 駒津峰から先、高山らしいやせた尾根が軽いアップダウンで続く。特に六方石の辺りから、岩をよじ登ったり下ったりが続き、ジャングルジムみたいだと特に亜実が喜びだした。そろそろブゥブゥ言い出す頃だったが、もうしばらくは機嫌が良かった。やがて花崗岩が風化した砂利砂の道。ここまで来ると頂上はすぐ目の前だが、ただただ登るだけの登山道に亜実が飽きだす。ふてくされて座り込むが、そのたびに下ってくる登山者達にほめられて、ニコニコ笑って立ち上がる。全くなんて奴だ。
 何とか12時前に甲斐駒ヶ岳の山頂到着。到着したとたんにガスが取り付いて、景色が見えなくなるが、たまにガスが切れると、魔利支天の頭や遠くの山々が見えて高度感がある。チキンラーメンで朝食を取り、下りが心配なのであまり長居せずに出発とした。

 駒津峰までは何とか着いたが、徹がだいぶバテテ来た。そこでパーティを二つに分けて、母親・亜実・努を先に下らせた。徹はチョットばかしウエイトが重く、特に下りがニガテだ。チョット段差があるとよっこいしょと言う感じでとても時間がかかってしまう。今回はとにかく手を出さないと決めたので、下り方の講義をしながらゆっくり付き合う。結局、登りよりも沢山の時間をかけて仙水峠に着いたのはもう夕方の5時近かった。ちょっと予定外の時間がかかってしまった。先発の亜実達はもうとっくにテントについている事だろう。
「暗くなる前に懐中電灯を出しやすい場所に入れ直せよ」と声をかけ、最後の水筒の水を分け合う。水の配分も失敗だった。先に下りた連中に一つもらっておけば良かった。「喉が乾いたよ〜」とせがむ徹をあめ玉でだまして歩き出す。だから仙水小屋で飲んだ水は彼にとっても最高の味だったろう。暗くなる直前にテント着。私の期待を裏切ってまだ夕飯はできていなかった。彼女たちも私たちを待って、仙水峠でだいぶ待ったようで、到着時間はあまり大差なかったからだった。

[3日目〜休息日]8/22(土)晴れ時々曇り
 昨日だいぶ疲れたので、今日は休息日とする。テント場のすぐ近くにある堰堤の上が程良い池となっていて、一日イワナの影を追って遊んだ。河原でシートを広げて、ちょっとしたピクニック気分だ。子供達はと言うと、昨日あんなに疲れたのが嘘のように飛び回って遊んでいたが、私と母親はほとんど木陰で昼ね状態だった。

[4日目〜仙丈岳ピストン]8/23(日)晴れのち曇り
 昨日一日休んだおかげで、親たちもすっかり疲れがとれる。甲斐駒よりも足場の悪いところが少ないので、前前日の甲斐駒よりも少し遅い時間に出発。バス停のある北沢峠から山道に入る。甲斐駒の経験と昨日の休息日のおかげか、みんなペースがいい。徹もゆっくりではあるが自分のペースをつかんだようで、確実に登ってくる。甲斐駒の時はコースタイムの50%増し程度で登っていたが、今日はほぼコースタイムと同じ時間で登れている。天気も良く、あーだこーだと寄り道をしながらも難所の小仙丈まで登り着いた。ここまで来ると目の前に仙丈カールが広がり、高山の雰囲気バッチリだ。

仙丈岳にて  小仙丈から仙丈岳までの稜線は森林限界を超えている為景色も最高で気分がいい。亜実は相変わらず岩場になると張り切るが、ダラダラ登りは何かというと文句をつけて座り込もうとする。こうなると、スピードが遅い徹よりも亜実の方が遅れ出す。しびれを切らし、努がどんどん先に登ってしまい、はるか上の方から手を振っている。さすがに野球部に入っている中学生は、この程度の山では疲れを知らないようだ。
 もう山頂に手が届くほどの距離になった頃、目の前の急斜面に白いガスがモクモクとわき出した。とたんに先頭を歩く長男を包み込み、一瞬視界が無くなる。「ほら雲だよ〜さわってごらん」と亜実に言ったら、沸いてくるガスに片手を伸ばしぐるぐるとかき回し、「生まれて初めて雲をさわった〜!」と興奮した大きな声で騒ぎ出した。「すごいな〜お父さんは大きくなって山登りするようになるまで、雲にさわれなかったんだよ〜亜実すごいな〜」と言って彼女の興奮に拍車をかけた。

 山頂はガスが巻いたりまた途切れたりだった。南に下る仙塩尾根が綺麗に見える。甲斐駒の事もあるのであまりのんびりせずに下り出す。下りは仙丈小屋方面に下りて、馬ノ背ヒュッテへ向かう。やはり下りになると徹は遅れだしたが、前回とは明らかに違ってしっかりと下り出す。"ちゃんと学習してるじゃん"と思った。
 馬ノ背ヒュッテから登りに通った大滝ノ頭へ登り返し、北沢峠着3時過ぎ。余裕の到着だった。
テントにて
[5日目〜下山]8/24(月)晴れ
 今日は最終日。ゆっくりと身支度を整えて北沢峠に向かう。バスの時間の30分も前なのにすでにバス停はザックでいっぱいだった。結局行きと同じで今回もバスが2台出て、座ることができたが、行き帰りのバスで登山者の多さを実感する。下山する登山者も多く、バスの時間までまだしばらくあったので、広河原からはタクシーに乗る事にした。料金は、大人5名だとバス台と同じになるのだが、子供がいるので少し失費だ。最初これで少しタクシーを躊躇していたのだが、結果としてタクシーが大正解だった事が起きる。亜実が車に酔ったのだ。運転手さんが風通しのいい場所に何度も止めてくれて、夜叉仁峠の登山口では美味しいわき水も飲めて、何とか下れたが、バスだったら気持ち悪いからといって一々停車はしてくれないだろうし、一度下車したら次のバスに乗るのも大変だった。やがて亜実も寝て、母親に抱かれたまま甲府駅到着。

 今回の山は家族そろっての初めての本格的な山登りだった。やっぱりキャンプと違う。だけどみんな頑張ったし、思っていた以上に子供達の適応能力がある事も分かった。早く下ったので我が家にはまだ日の高い内に到着。来年は涸沢だゾ。また登ろうナ。
 いつもは遅くまで起きて騒いでいる子供達が、今夜は早々と寝た。ん〜満足満足。風呂あがりの二人で飲むビールがうまい。

以上 川名 匡 



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一級遊び人:川名 匡 t_kawana@da2.so-net.or.jp